両全の道

先生はおっしゃった。 世界の中で法則とすべきは、天地の道、親子の道、夫 婦の道、農業の道という四つの道 だ。この道は、実に両者が双方ともに完全な道であ る。どんなことでも、この四つの法則 を規範とすれば、間違いはない。
私がかつて、
「おのが子を 恵む心を 法とせば 学ずとても道に到ら ん」
と歌に詠んだのは、この心を指してのものだ。 天は生み育てる徳を下し、地はこれを受けて発生して いく。親は子を育て、損益を忘れ てひたすらその成長を楽しみ、子供は育てられて父母 を慕う。夫婦の間においても、お互 い楽しんで、子孫が相続していく。農夫は勤労して、 植物の繁栄を楽しみ、草木もまた喜 び繁茂する。みなお互いに苦しみがなく、喜びの気持 ちがあるだけだ さて、この道を規範として従うときは、商売は売って 喜び、買って喜ぶことができる売って喜び、買って喜ばないのは、道ではない。買って喜び、売って喜ばないの、釘はない。貸借の道も、また同じだ。借りて喜び、貸して喜ぶようにすべきだ。借りて喜び、貸して喜ばないのは、道ではない。貸して喜び、借り
て喜ばないのも、道ではない。
あらゆること、このように私の教えは、これを法則としている。だから、天地の生み釘てる心をわが心とし、親子と夫婦の情に基づいて損益を度外視し、国民が潤い、土地が復興することを楽しむのである。そうでなければ、私の行う事業はできないことなのである。
無利息金貸し付けの道は、元金が増加するのを長所とせず、貸付高が増加することを長所とするのである。これは利をもって利とせず、義をもって利とするという意味である。
元金の増加を喜ぶのは、利心である。貸付高の増加を喜ぶのは、善心である。こうして元金はもとの百円のままで、増 減がなく、国家国民のために莫大な
利益になる。 これはまさに、太陽が万物を成長させ、いつまでも太 陽は一一つの太陽でいるようなもの だ。古語(「孝経」広要道章)に「尊敬する対象は少人 数でありながら、それによって礼儀 正しい風俗が広まり、喜びを得る人たちが多くなる。 これが大切な道だ」とあるのに近い。 私がこの貸し付けの方法を立てたのは、世の中で金銀 を貸して返すように催促し尽くした後に裁判を願い、そうやっても取れないときになって、無利息年賦とするのが通例であ
る。だから、この理屈をまだ貸さないうちに見て、この方法を立てたのである。しかし、それでもまだ不十分なところがあるので、「無利息何年据置き貸し」という方法も立てたのである。 このようにしなければ、国を復興し、世の中を潤せな いからだ。すべてのことは、将来 行き着く先を事前に見定めることにある。人は生まれ たら、必ず死ぬものだ。死ぬものだ ということを、事前に覚悟しておけば、「生きている だけ一日一日がありがたい」と思え るだろう。これが、私の道の悟りである。 生まれ出て、死のあることを忘れてはいかん。夜が明 けたら、暮れるということを忘れるなよ。