鼠の地獄 猫の極楽
吉凶·禍福·苦楽·憂歓などは、相対して表裏一体のもの である。 なぜなら、猫が鼠を捕ったとき、猫にとってそれは楽 しみの極みだが、捕られた鼠にと っては苦しみの極みであるからだ。蛇の喜びが極まる とき、蛙の苦しみが極まる。鷹の喜 びが極まるとき、雀の苦しみが極まる。猟師の楽しみ は、鳥獣の苦しみである。漁師の楽 しみは、魚の苦しみである。 世界の事物はみなこのように、こちらが勝って喜べ ば、あちらが負けて悲しむ。こちら が田地を買って喜べば、あちらは田地を売って苦し む。こちらは利益を得て喜べば、あち らは利益を失って悲しむ。人間世界は、みなこんなも んだ たまたま悟りの門に入る者もあれば、これを嫌って山 林に隠れ、批世の中を逃れてこれを 捨てる者もいる。これでは、世の中の役には立たな い。その志や行動は尊いように見える 世の中のためにならなければ、褒めるに足らない。
ところで、あっちも喜びこっちも喜ぶという道がない わけではない。それは天地の道、 親子の道、夫婦の道、農業の道という四つの道だ。こ れは法則とすべき道だ。よく考えられよ。